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小説・詩・他いろいろを載せて行きたいと思います。 旧サイト(http://kleinewelt.nobody.jp/)の作品も順次こちらに移動させていきます。 ブログでリハビリしながら、またサイトを作っていきたいなあと、のんびり思っている次第です。 それでは、よろしくお願いします。
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よしもとばななさんみたいな作品が書きたいです。


 雨が降っている。
 水が雨樋を伝って落ちていく音が、窓の外から聴こえてくる。
 深夜で、外は静かで、雨が降る音と、それよりも大きな雨樋を伝って落ちる水の音しかしない。外からは。
 中は、冷蔵庫の低い駆動音と、人の寝息。
 変なものだ、と思う。隣で眠っている人を見下ろして思う。枕の上に鮮やかに咲いた朱色の髪は、猫の毛のように柔らかそうだ。手を伸ばして触れてみると、意外に痛んでいて、少し軋んでいた。まるで本人をそのまま映した鏡のようだ、そんな風に思って、笑みがこぼれた。
 寝ている顔はあどけなくて、半開きの口元がなんとも間抜けで。
 どうして自分がここにいるのだろうと、どうして自分が隣にいるのだろうと、いつも押し寄せてくる疑問は、大抵決まってこんな時に浮かんでくる。きらきらと光る宝石の周りには、やっぱりきらきらと光る宝石が集まってくる。自分はただの石ころだと卑下する気持ちは毛頭ないが、それでも、集まってくる宝石と比べたら見劣りをするような感じで。そんな自分が嫌いではなくて、むしろそんな自分でいいと思っているのだが、それとこれとはまた別の感情なのである。
 独占欲より何よりも、そんないじらしい感情が自分に浮かんでくることにまず驚いて、そしてそれを楽しんで、そして今は、それに悩んでいる。
 向けられる感情に、自分は応えているのだろうか。
 向けられてくる想いに、自分は応えているのだろうか。
 自分の気持ちが分からなくて、自分の心が分からなくて、そんな自分が分からなくなる。奇妙な浮遊感が支配する。無重力は気持ち悪い。
「どうしたの?」
 声がして、はっとして、見下ろすと、閉じていた瞳が開いていた。緑がかった黒い瞳が、こちらを見上げてくる。
「……何でもない。目が覚めたから……起こしちゃいました?」
 んー、と、どちらともとれる声を出して、起き上がり、同じようにベッドの上に座る。
「触ってもいい?」
「……はい」
 伸ばされた左手が、頬に触れた。
「俺は、気にしてないよ」
「……だけど」
「だってさ、ヤルだけが関係じゃないし」
「だけど……」
 言葉が続かない。
「あのね、ヤリたいだけなら、今の時代、結構なんとかなるんだよ。でもさ、それ以外を求めているんだから。それはひとつの手段であって、目的にはなりゃしないのよ」
「うん……」
 頬に触れていた手が動いて、そして、息が止まった。
「……これだってさ……確認方法のひとつなんだよ」
 顔を離して、照れ臭そうに笑って言う。
「娯楽としてのセックスとか、好きじゃないし」
 言って、いい? と首を傾げる。私は覚悟を決めて、頷いた。
 それを、笑われた。
「そんなふうにする相手に無理強いしようなんて思わないよ」
 身体に腕が回ってきて、そのまま一緒にベッドに倒れるように横になった。
「まずは、他人の体温になれましょうか、お嬢さん」
「慣れるかな……」
「慣れてよ。せめて俺のにはさ」
 二人で笑って、そして、目を閉じた。

                〈了〉
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