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小説・詩・他いろいろを載せて行きたいと思います。
旧サイト(http://kleinewelt.nobody.jp/)の作品も順次こちらに移動させていきます。
ブログでリハビリしながら、またサイトを作っていきたいなあと、のんびり思っている次第です。
それでは、よろしくお願いします。
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僕のひいおじいちゃん
こういう感じの話が好きです。 2006年05月16日
「僕のひいおじいちゃん」 僕のひいおじいちゃんは、自転車で三十分かかる町の外れに住んでいる。緑の多い、林の近くの家で、周りにはコンビニなんかなくて、木と畑しかない。ちょっと歩くと神社があって、そこの境内には向かい合った狛犬がいる。まだ僕が小さい頃、その狛犬が怖くて泣いてしまったことをひいおばあちゃんから聞いたと、ひいおじいちゃんは笑って言って、僕を怒らせる。 ひいおじいちゃんのことを、僕は、 「ひいちゃん」 と呼ぶ。ひいおじいちゃんじゃ長いし、ひいおじいちゃんは実にひいおじいちゃんらしくないからだ。 僕のひいおじいちゃんは、今年で二十五歳になる。ひいおばあちゃんと結婚した時、ひいおじいちゃんはなんと十八歳だったのだ。 「もう、みんな大反対だったのよ」 とお母さんは言う。 本当のひいおじいちゃんはその二十年前に交通事故で亡くなっていて、結婚するのに問題はなかったそうなんだけど、でも、やっぱり年の差がすごく問題になったそうだ。特に今のひいおじいちゃんの両親が猛反対して、それをひいおじいちゃんがまる一ヶ月かけて説得したらしい。これはひいおじいちゃんから聞いた話だ。 お付き合いと言うと、もっと早くて、ひいおじいちゃんが高校生の頃からお付き合いをしていたそうだ。周りはただ、おばあちゃんの話し相手をしているだけ、と思っていたみたいですけどね、なんて、ひいおじいちゃんは言う。でも、そう言うひいおじいちゃんはとても幸せそうな顔をするのだ。 結婚は、ひいおじいちゃんが大学進学のために親元から離れる時に合わせてしたらしい。そしてひいおばあちゃんは、ひいおじいちゃんの通うことになる大学の街に引っ越して、二人は一緒に暮らして新婚生活を送ったらしい。周りには、ただおばあちゃんと暮らす孫のように映ったでしょうね、なんて言うひいおじいちゃんの左手の薬指には、その当時からずっと嵌めている結婚指輪があるのだ。 ひいおじいちゃんは、本当にひいおばあちゃんを愛していた。 ひいおばあちゃんも、本当にひいおじいちゃんを愛していた。 そんなひいおばあちゃんは、一年前に死んでしまった。 心臓の病気で、あっという間に、死んでしまった。 その時のひいおじいちゃんの悲しみようと言ったら、本当に見ていられなくて。それで、それまでちょっとだけ距離を置いていた親戚の人達が、ひいおじいちゃんを認めるようになったと思う。 そんなひいおじいちゃんは、大学を卒業してから愛する奥さんと一緒に移り住んだ家に、まだ住んでいる。外に働きに出ることはなくて、絵を描いたり、写真を撮ったりして、それを雑誌や賞とかに出して、それで生活費に当てているそうだ。僕はよく知らないけれど、ひいおじいちゃんは一部ではとても有名な画家さんで、写真家らしい。確かに、ちょっと浮世離れしていて、現実離れしているひいおじいちゃんは、そういう芸術家っていうのが良く似合うと思う。 ひいおじいちゃんは、とても変わり者なのだ。もうその時すでにおばあちゃんだった、いや、ひいおばあちゃんだったひいおばあちゃんと結婚したってだけでもじゅうぶん変わり者だと思うけど、でも、それを抜いたとしても、ひいおじいちゃんはじゅうぶん変わり者なのだ。 まだ幼い僕に丁寧な言葉を使うのもひいおじいちゃんだけだし、寝たい時に寝て起きたい時に起きている大人も、僕の周りにはひいおじいちゃんしかいない。 ちょっと変わっていて、それで他の大人たちと違うから、僕はひいおじいちゃんが大好きだった。 たくさん話す人ではないけれど、僕のしょうもない話にもちゃんと耳を傾けてくれるし、飲み込みの悪い僕の勉強にもちゃんと付き合ってくれる。たとえば僕がお母さんと大喧嘩して家を飛び出してきて、ひいおじいちゃんの家の、ひいおじいちゃんのアトリエの隅でうずくまっていても、他の大人がするようなよけいなお節介は一切しなくて、ただじっと、僕が話そうとするまで待ってくれるのも、ひいおじいちゃんだけだ。 そんなひいおじいちゃんだからひいおばあちゃんは大好きになったんだろうな、とは思う。でも逆に、どうしてひいおじちゃんがひいおばあちゃんを好きになったのかは分からない。ひいおばあちゃんはやっぱりおばあちゃんだし、ひいおじいちゃんはとっても若くて、それにかっこいいのだから、もっと自分と同じくらいの女の子を好きになってもおかしくないと思うのだ。しかも、ひいおじいちゃんは今でもひいおばあちゃんとの思い出がある家から離れなくて、新しい彼女も一切作ろうとしないのだ。 「どうしてひいちゃんは、ひいおばあちゃんを好きになったの?」 と、前に聞いたことがあった。その時ひいおばあちゃんはお昼寝をしていて、ひいおじいちゃんと二人だけの時だった。 ひいおじいちゃんはちょっと照れたように笑って、 「そういう運命だったんですよ」 と言った。 僕は正直分からなかった。 運命を感じる、とかって言葉はよく聞くけど、実感したことなんてなかったからだ。それが分かったんだと思う、ひいおじいちゃんはちょっと考えて、 「初めて会って、話して、そうやって何回も会っている内に、好き合うことがずっと昔からの約束のような気がしたんですよ。あなたも誰かを好きになれば分かりますよ」 そう言われても、やっぱり良く分からなくて、ひいおじいちゃんは笑ったのだ。 自転車で三十分の道を漕いでひいおじいちゃんに会いに行くのは、土曜日の僕の習慣だった。本当は毎日通いたいんだけど、学校があるから無理なんだ。だから、土曜日は朝から行って、二人でお昼ご飯を作って、野山に行ったり、買い物に行ったりして過ごす。うちはお母さんが働いているから、もっと子どもの頃はよくひいおじいちゃん家に預けられていた。その時はお母さんの車で送られていたけれど、今は自分ひとりで来れる。 自転車を玄関先に置いて、 「来たよ!」 と声を掛けて中に入る。玄関に鍵がかかっていることはあまりない。 ひいおじいちゃんは大抵、リビングかアトリエにいる。迎えに出てくることはほとんどないので、僕はそのまま靴を脱いでそのどちらかに足を向ける。今日はアトリエの方に行った。そしてやっぱりそこにはひいおじいちゃんはいて、熱心にキャンバスに向かって筆を走らせていた。集中していて、僕に気付かない。 その邪魔をしないようにアトリエの隅に座って、ひいおじいちゃんが絵を描いている姿をじっと眺めていた。 いつも、いつも、ひいおじいちゃんが絵を描く姿はすごい、と思う。とても集中していて、まるで、神聖な何かをしているようなのだ。 「ああしていると、わたしが入ってきても気付かないのよ」 なんて、ひいおばあちゃんはにこにこ笑いながら言っていた。でも、もうひいおばあちゃんはいない。 「――ああ、来ていたんですか。すみません、気がつきませんでした」 筆を置いたひいおじいちゃんが僕のほうを向いて、笑った。 「いいよ。さっき来たとこだから。絵、完成したの?」 「はい。見ます?」 「うん」と頷いて、立ち上がってキャンバスの正面に立つ。どいてくれたひいおじいちゃんは、道具の片付けを始めた。 「……きれいだね」 僕は素直に感想を述べた。 「はい、いつも綺麗な人でしたから」 キャンバスには、緑の中佇んで微笑むひいおばあちゃんの姿があった。本当に、上品に年を取ったどこかの国の伯爵夫人のように、ひいおばあちゃんはそこにいた。 一年前から、ずっと、ひいおじいちゃんはひいおばあちゃんの絵しか描いていない。どれも違う姿で、そしてどれもきれいだった。 「ひいちゃんは、今もひいおばあちゃんのことを好きなんだね」 アトリエから出て、紅茶を淹れるためにお湯を沸かしているひいおじいちゃんの背中に言った。ひいおじいちゃんはゆっくりと振り向いて、 「はい、もちろんです。今でもあの人を愛していますよ」 と微笑んだ。 「みなさん、まだ若いんだから、と再婚を勧めてきますけど、当分そのつもりはありません。私が愛するのはあの人だけですから」 ひいおじいちゃんと話していると、もっとずっと年上の人と話しているような錯覚が起こることがある。それはたぶんその話し方や、立ち居振る舞いや、こういう考え方のせいなんだと思う。 「……辛くない?」 なんて聞いてしまってから後悔する。一年経ったとはいえ、愛する人を失ったのだ、辛くないわけがない。 それでも、ひいおじいちゃんは僕を叱ったりせずに、笑って答えてくれるのだ。 「辛いです。でも、辛抱すれば、また会えますから」 「会う?」 それを聞いて、真っ先に浮かんだのはひいおじいちゃんが死ぬってことだった。ぼくがそう思ったのが分かったんだろう。ひいおじいちゃんは困ったように笑って、 「私があの人の許に行くってことじゃないですよ」 と言った。じゃあどういう意味なの? と聞いたら、もっと困ったように笑って、 「輪廻転生って分かります?」 「えっと、生まれ変わり? 前にやったゲームで出てた」 「あの人は約束してくれたんですよ。どうせ自分が先に死ぬんだから、死んだらすぐに生まれ変わってあなたの許に行くよ、って。だから、あの人が生まれ変わって私の前に現れてくるのを待っているんです」 普通の人だったら、とうとう悲しみで気が狂ってしまったか、と思ってしまうんだろうけど、ひいおじいちゃんを見ていると、そういうのもありかも、と思ってしまう。 「会えるの?」 それでも聞いてしまう。 「会いますよ。ちゃんと、つながっていますから」 お湯が沸いたので、ひいおじいちゃんはポットに注ぐ。中にあった紅茶の葉っぱが、踊りだす。 「何が?」 「そうですね、なんて言うんでしょうか。赤い糸って言うとロマンティックですよね。私は魂だと思うんですが」 紅茶のお供のクッキーが出てきて、僕は喜ぶ。だから、この後ひいおじいちゃんが言った言葉を、よく聞いていなかった。 「一度成功していますからね。二度目もきっと大丈夫です」 「――え?」 クッキーから顔を上げると、ひいおじいちゃんはやっぱりにっこりと笑っていて、 「愛の力は偉大ってことですよ」 と言った。 〈終〉 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 姉さん女房が流行ってますよね。かく言う私の母も姉さん女房です。 若い女とジジイという関係よりも、若い男とおばあちゃんという関係のほうが良い気がするのは何故でしょうか。 私が女だからでしょうか。 男の子の一人称の方が、女の子の一人称よりも書き易いなあ、と思うのは、女としてどうだろう、と思う蓮でした。 PR コメントを投稿する
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