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小説・詩・他いろいろを載せて行きたいと思います。
旧サイト(http://kleinewelt.nobody.jp/)の作品も順次こちらに移動させていきます。
ブログでリハビリしながら、またサイトを作っていきたいなあと、のんびり思っている次第です。
それでは、よろしくお願いします。
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断片《夜の散歩》
ちょっと前に考えた中編くらいのの断片です。 なんか,ぼんやりと浮かんできたので。 語り手が小学校2~3年生くらいの設定なので, どういうことばでしゃべるんだ!? と戸惑いつつも,30分くらいで書き上げました。 だいぶ荒削り。 これも一度ちゃんと書きたいのですが,そんな感じのネタがたまりまくってて困る。 こうやって断片を書いて,まとめていきたいですね。 断片《夜の散歩》
こんな夜中に,マクドナルドのハンバーガーを食べるなんて,あたしもおとなになったものだわ。いつもはママにおこられるけど,そんなママはいないから,目いっぱいに大きな口をあけて,ぱっくり,とハンバーガーにかぶりつく。なんてカイカン。 まんぞくまんぞくとモグモグしていたら,ナナシが,「ケチャップがついてるよ」って,ナプキンでぬぐってくれた。立ちっぱで,ぎょうぎわるくハンバーガーにかぶりついているトクメーと大ちがいだわ。 「ありがとう」と,あたしがお礼を言うと,どういたしまして,とナナシは笑う。 公園の明かりの下,ナナシのまっしろな顔は浮かんで見える。髪も服も真っ黒だから,そこだけが幽霊みたいに,ぼうっと浮かんでいる。こわい,というよりは,なんていうか,森の中で妖精の王様に会った気分。やわらかくほほ笑むナナシの瞳は,夜のお空みたいに真っ黒。その目がすっごくやさしいなって,あたしは思っている。 「大口開けて食ってると,あごが外れるぞ」 トクメーがいやみを言ってくる。むっとするけど,それを顔に出すのはお子様がすることだ。あたしは,あっかんべ,ってして,またハンバーガーをほおばる。 なんで,こんなにもぞくぞく,わくわくするんだろう。 「杏里,疲れてない?」 ウーロン茶だけをのんでるナナシが聞いてくる。トクメーは自分とあたしの分のハンバーガーとポテトしか買ってこなかった。ひどいってあたしが言うと,いいんだよ,ってナナシは笑った。 「だいじょうぶ。ぜんぜんつかれてないよ」 にっこりと笑う。だって,笑うくらいしかあたしはできない。でも,杏里ちゃんの笑顔はみんなを元気にしてくれるね,て言われてるから,きっとだいじょうぶ。 「もう少しおびえとか見せたら,かわいげがあるというのに」 すえおそろしいね,なんて,トクメーが言う。それをナナシがおこる。やさしい声と言葉だけど。うん,トクメーはいっつもきげんが悪い。あんまりしゃべらないし,しゃべってもそんなことを言う。ナナシはぜんぜんちがって,あたしにいっぱい話しかけてくれる。今日会ったばかりだって言うのに,あたしはナナシが大好きになっていて,トクメーはそんなに好きじゃない。 「さっさと本体を探して,そいつの印を消さないと」 トクメーがあたしの右手を指差す。けがをしていないけれど,右手には包帯がぐるぐるに巻かれている。まっしろい包帯じゃなくて,なんか,みみずがのたくったような字が書いてある。きっと,たぶん,これって字だよね。 「日もすっかり暮れちゃいましたしね。朝が来る前に片をつけないと」 ナナシが,ちゅー,ってウーロン茶を吸い込む。 「なんで朝が来る前なの? 言ったよね,あのまっくろい化け物は,日の光の下じゃ動けないって」 だったら,朝まで逃げたら勝ちなんじゃないのかな? と思うんだけど。 「確かに,朝日が昇れば奴の力は薄らいで,あの影どもも襲ってこないけどな。でも,そうなると厄介なんだよ」 「やっかい? なんで?」 むっとトクメーがする。 「どうしてこう,ガキってのは,なんで,どうしてが多いんだよ」 自分だってコーコーセーくらいなのに。 「だめですよ,トクメイ,ちゃんと説明してあげないと」 「だから,トクメイって呼ぶのよせよ。僕には,ちゃんと篤明って名前があるんだから。みろ,こいつすっかりトクメーってため口じゃん。なんだよ,匿名希望のトクメイじゃないんだぞ」 「いいじゃないですか。親しみやすくて」 「よくない。それに,説明したって理解できないだろ」 トクメーは,やっぱりムカッとくることを言う。 「違いますよ。大事なのは,理解させることじゃなくて,説明することです。説明をすることは,相手を尊重していること。俺たちは,杏里を尊重しなくちゃいけないんですよ。ひとりの人間として」 ナナシはいいことを言う。トクメーがぐっとだまってしまう。でも,ちょっと言うことがむずかしい。 「杏里,朝を迎えることはできないんですよ」 ナナシが,体をぜんぶあたしに向けてくる。ベンチに並んで座ってるから,ちょっと体をひねったかんじだ。 「朝を迎えてしまうと,その右手の印が広がって,杏里の体が危なくなってしまうんです」 「……トクメーが包帯でだいじょうぶにしてくれたんじゃないの?」 「一時しのぎです。ちょっとの間,印が広がるのを抑えてくれるだけなんです。時間がたてばたつほど,その印は杏里自身をむしばんでしまいます」 ちょっとこわくなって,右手を見る。包帯のせいで動かしにくいのだけれど,それ以外でも動かしにくい気もする。 「日の光が昇れば,確かに相手の動きは鈍ります。でも,同時に眠りについてしまい,気配を探るのが非常に難しくなるんです。夜になればその気配もまた濃くなりますが,そうなれば印はまた大きくなります」 「じゃあ,夜のあいだに,あたしたちはラスボスを見つけなくちゃいけないの?」 「見つけるのは僕らの仕事だ」 トクメーがむっつりと口をはさんでくる。見上げるとトクメーは,口をきゅっと結んで,目の前にしゃがんだ。 「俺が奴を見つけるまで,ナナシがお前を守る。で,奴を見つけたら僕とナナシでそいつをやっつける。朝日が昇るまでにだ」 「出来なかったらどうなるの?」 トクメーは目をそらすと,少し考えるような顔になって,で,あたしを見て言った。 「印をつけられたのが,そいつ自身のままでいられるのは朝日が昇るまでだ。印をつけられた時点でもう半分はあっち側だから,朝日が毒になる。もちろん,つけたのをやっつけたら元に戻るけど,その間にどんだけ損なわれるかわからない」 「んーと,つまり,朝が来る前にけっちゃくをつけないと,やばいってこと?」 そうなる,ってトクメーはうなずいた。ナナシを見ると,ナナシも同じようにうなずく。 「大丈夫だ」 トクメーが,強い声で言った。 「僕らが,ちゃんとラスボスやっつけて,お前を家に帰してやるよ」 にっこりと笑う。でも,顔が怖いから,笑顔もやっぱりちょっと怖い。でも,そういうの,きらいじゃない。 「うん,きたいしてる」 あたしはにっこり笑って,右手を出した。包帯でぐるぐる巻きだけど,指だけは出てる。だから,小指を立てて, 「ゆびきりげんまん」 トクメーは目を丸くして,だからガキは,とか言いながらも,自分の小指をつないでくれた。 「ゆびきりげんまん,うそついたら,はりせんぼんのーます」 ぶんぶんとふる。だいじょうぶ,だいじょうぶ。 「ゆびきった!」 ぱっと指がはなれた。 「ナナシも」 「はい」 同じようにナナシともゆびきりげんまんをする。 「よし,はらごしらえはもういいな」 あたしがやっとハンバーガーとポテトを食べ終えたら,トクメーが言った。気合いを入れるってかんじの声。 「さっさとラスボスを見つけるぞ」 「その前に」 ナナシがあたしの体をひょいって持ち上げて,そのまま抱っこをしてくれる。片手で体を支えてくれて,あいた右手をだらんとぶらさげる。あたしはナナシの首にきつくきつく両腕をまいた。 「こいつらをまかなくちゃいけませんね」 いつのまにか,明かりの外側に,ひょろりとした棒人形のような影がいくつもできていた。ゆらりゆらりとゆれながら,ゆっくりと近づいてくる。もう,何度かあたしたちをおそってきた奴だ。 「長い夜になりそうだ」 トクメーが言った。あたしもそう思う。 ふだんもまだ起きてる時間だけれど,このままだとはじめて目いっぱい夜更かしをすることになる。はじめてのたいけん。 ぎゅうっと腕に力を込めると, 「だいじょうぶ」 とナナシがやさしい声で言ってくれた。 「杏里は俺たちが守りますからね」 ナナシが言うからだいじょうぶ。あたしは細いけれど力のある腕に体をあずけた。 包帯を巻いた右手がまた痛みだしたけれど,だいじょうぶ,がまんできる。だって,今のあたしにはナナシとトクメーがついているんだから。 〈了〉 PR コメントを投稿する
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